そろそろ喰ってもいい頃だよな?〜出会ったばかりの人に嫁ぐとか有り得ません! 謹んでお断り申し上げます!〜
 そう思った私は店員さんに小さくうなずくと、緊張でフルフル震える手で頼綱(よりつな)の左手薬指にリングを通す。
 手が震えているからか、なかなかうまく彼の指――特に男性らしく節くれだった関節の辺り――を通過させられなくて四苦八苦してしまった。

 そんな不器用な自分の手際の悪さが、照れくささに拍車を掛ける。

 頼綱は、私のモタモタした動作でさえも愛しくて堪らないと言わんばかりの優しい目でじっと見つめてきて。

 その視線ですらも、私の胸をどうしようもなく高鳴らせるの。


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