そろそろ喰ってもいい頃だよな?〜出会ったばかりの人に嫁ぐとか有り得ません! 謹んでお断り申し上げます!〜
「頼綱坊っちゃま、これからは父親になられるんですから、お家でも花々里さんを支えられるよう、もう少し家事も覚えてくださいましね?」
――わたくしも、いつまで坊っちゃまのお世話を焼けるか分からないのでございますから。
ぽつんと付け加えるように落とされた言葉に、私は胸がキューッと切なくなった。
と、同時。
「イタタタ……」
またしてもお腹が痛くなって、机に手を付いて立ち止まる。
あ、やばい。
陣痛の間隔、10分切ってるかも?
八千代さんに指示されて、お弁当箱につめた手毬おむすびを、風呂敷で包んでいる頼綱を横目に……。
「よ、り、綱っ……お願っ、そろそろ、病……い、んっ」
ギュッと手に力を入れながら、涙目で彼を振り仰いだ。
頼綱はそんな私をサッとお姫様抱っこの要領で抱き上げると、今包んだばかりのおむすびを手に、「行ってきます」と八千代さんに声をかけた。
「八、千代さっ、お母さんが戻っ、てきたら」
あいにく今日は外せない仕事があるとかで、私を気にしつつも出掛けてしまったお母さんの事をソワソワと心配したら、「お任せくださいまし!」とガッツポーズで見送られて。
頼綱の車のトランクルームには、今日の日に備えて、すでに入院道具一式が積み込んである。
「ね、頼綱。おむすび、車の中でひとつ……つまんでも、いい……?」
頼綱の腕の中、さっきまでの役立たずっぷりが嘘みたいに凛々しくも頼もしい彼の顔を見上げてそう問いかけたら、頼綱が一瞬瞳を見開いてから、すごく嬉しそうににっこり笑って「もちろんだよ」と頷いてくれた。
予定通り、美味しい美味しい鰻のおにぎりとともに、御神本花々里、いよいよ一世一代の大仕事に出陣して参ります!
END(2020/08/14〜2021/08/19)
――わたくしも、いつまで坊っちゃまのお世話を焼けるか分からないのでございますから。
ぽつんと付け加えるように落とされた言葉に、私は胸がキューッと切なくなった。
と、同時。
「イタタタ……」
またしてもお腹が痛くなって、机に手を付いて立ち止まる。
あ、やばい。
陣痛の間隔、10分切ってるかも?
八千代さんに指示されて、お弁当箱につめた手毬おむすびを、風呂敷で包んでいる頼綱を横目に……。
「よ、り、綱っ……お願っ、そろそろ、病……い、んっ」
ギュッと手に力を入れながら、涙目で彼を振り仰いだ。
頼綱はそんな私をサッとお姫様抱っこの要領で抱き上げると、今包んだばかりのおむすびを手に、「行ってきます」と八千代さんに声をかけた。
「八、千代さっ、お母さんが戻っ、てきたら」
あいにく今日は外せない仕事があるとかで、私を気にしつつも出掛けてしまったお母さんの事をソワソワと心配したら、「お任せくださいまし!」とガッツポーズで見送られて。
頼綱の車のトランクルームには、今日の日に備えて、すでに入院道具一式が積み込んである。
「ね、頼綱。おむすび、車の中でひとつ……つまんでも、いい……?」
頼綱の腕の中、さっきまでの役立たずっぷりが嘘みたいに凛々しくも頼もしい彼の顔を見上げてそう問いかけたら、頼綱が一瞬瞳を見開いてから、すごく嬉しそうににっこり笑って「もちろんだよ」と頷いてくれた。
予定通り、美味しい美味しい鰻のおにぎりとともに、御神本花々里、いよいよ一世一代の大仕事に出陣して参ります!
END(2020/08/14〜2021/08/19)