そろそろ喰ってもいい頃だよな?〜出会ったばかりの人に嫁ぐとか有り得ません! 謹んでお断り申し上げます!〜
***

 エレベーターで目的の階に上がると、扉が開くと同時、頼綱(よりつな)に腕を差し出された。


 昇降機(はこ)の中で、私がしれっと頼綱から離れて中にあるバーに掴まったこと、しっかり気付かれていたみたい。



「転ぶといけないからね」

 もっともらしくそう言われてもなお、躊躇(ためら)っていた手を半ば強引に取られてゆっくりと引かれる。

 そのままゆるゆると頼綱と手を繋いだままエレベーターを降りると、右手奥のお店に向けて歩き出した。


 でもっ!
 足元が柔らかい絨毯(じゅうたん)になっているせいで、ヒールが取られてホテル外の石畳や、建物内に入ってからの石床の上に敷かれた薄めのレッドカーペットを進んだ時より遥かに歩きにくいの!
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