そろそろ喰ってもいい頃だよな?〜出会ったばかりの人に嫁ぐとか有り得ません! 謹んでお断り申し上げます!〜
***

「――花々里(かがり)、お帰り」

 言われて、私はやっと焦点を結ぶことができるようになった目で、頼綱(よりつな)を見上げる。

「頼……綱、ただいま」

 少し声がかすれていたのもあって、聞こえたかな?って不安になったけれど、頼綱はちゃんと聞こえたよ、って言うみたいに私の頭を撫でてくれて。

 そのことに心底ホッとする。


「――ところでね、花々里。その格好のままだと……一応俺も男だし、ちょっと色々しんどいかな?って思うんだけど。……風呂に入って着替えてこないかね?」


 言われて、私は自分を見下ろす。そうして思いっきり悲鳴を上げて縮こまった。

 だ、だ、だ、だってっ! し、し、し、下着っ! 透けまくってるっ!


「は、は()っ! そうしますっ!」

 場所は先ほど施術?を行ったバスルームの中。

 言って、頼綱を恐る恐る見上げたら頼綱が「出て待ってるからね」と私をそっと立たせてくれてから、バスルームを出て行くの。


 私、その時になって初めて、頼綱のズボンも私のせいであちこち濡れてしまっていることに気がついて。


「あのっ! ごめん、なさいっ!」


 立ち去る頼綱の背中に向けて思わず謝ったら、「それは()()()()に対しての謝罪かな?」と聞かれて「え?」と思う。
< 592 / 632 >

この作品をシェア

pagetop