そろそろ喰ってもいい頃だよな?〜出会ったばかりの人に嫁ぐとか有り得ません! 謹んでお断り申し上げます!〜
 どのことって。
 私、そんなにあれこれやらかしちゃってる!?


 えっと……直近で考えたら頼綱(よりつな)の服を汚してしまってるでしょ。

 あとは小さくなってしまって、元に戻るのに頼綱の手を色々取ってしまったよね。

 それから……買い物途中で寄り道した挙げ句、帰れなくなって、頼綱にご足労かけてしまったと言うのも外したらダメ、かも。


 あ、買い物といえば――。

 ふと思い出して周りをキョロキョロと見回してみたけれど、私が入っていた小瓶はおろか、あんなに咲き誇っていた花たちも何にも無くなっていて。

 意識を手放す少し前、周りのものがどんどん境界を無くして淡く霞んでいったのを覚えている。

 そうして最後に消えたのがガラス瓶で。

 その、ガラスの境界線が消えたと同時に私は外に放り出されたんだった。

 私と共に小瓶の中に一緒に封入されていた、鶏モモとチーズの入った、緑のエコバッグはどこ!?

 もしかして……花や小瓶と一緒に……消えちゃった!?


 あ……。頼綱(よりつな)はきっと、お使いをまともに出来なかったことを怒ってるんだっ!

 食料品を無駄にしちゃうとか……最低だもんね。
 お買い物が昨日のこととなると、昨夜の夕飯はどうなったのかな。八千代さん、頼綱に何を作ったんだろう。
 鶏モモとか絶対メインだったよね。
 わーん! ごめんなさいっ!

 これ、私が頼綱と同じ立場でも怒っちゃうやつ!


「か、買い物袋のこと……だよね? あのっ、鶏モモとチーズ、なくしてしまってごめんなさいっ! 昨夜の夕飯、台無しにしてしまって本当に申し訳ありませんでしたっ!」

 思って一気にそうまくし立てたら、小さく吐息を落とされた。

「本当、鈍感で腹立たしいね、キミは」


 脱衣所の入り口で私を怒った顔で睨みつけてから、「風邪をひく。まぁとりあえず先に風呂と着替えを済ませたまえ。――この話はその後だ」


 言われて脱衣所の扉が閉ざされて……私は何だか突き放されたみたいに悲しくなった。
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