そろそろ喰ってもいい頃だよな?〜出会ったばかりの人に嫁ぐとか有り得ません! 謹んでお断り申し上げます!〜
信号待ちの時、車のシフトレバーをパーキングに入れてサイドブレーキを引くと、俺は花々里が眠る助手席シートをほんの少し倒してやる。
その際、やむを得ず彼女の上に身体が覆い被さる体勢になってしまったんだが、花々里は全然目を開ける気配がない。
信号が青になる前に運転席に戻ってハンドルを握らねばならないというのに……。
ついついこのまま、とか思ってしまう程度には、花々里の無防備さが俺を蠱惑する。
と、薄く開いた花々里の唇から「頼、綱ぁ……」と俺を呼ばわる声がして。
目を覚ましたのかと期待したのだが。
「……鰻……美味しーね」
とか。
何だ、寝言か……と思うと同時に、切ないくらいそんな花々里に対して愛しさが込み上げてくる。
何だって俺の花々里はこんなに可愛いんだろう。
キミはきっと……今、食べさせたばかりの鰻の夢を見ているんだろうね。
せっかくいい夢を見ているみたいだし、起こすのは忍びない。
ほんの少し遠回りをして帰ろうか。
そんなことを思ってしまう程度には、俺はこの娘のことが愛おしくて堪らないみたいだ。
END(2021/03/24)
その際、やむを得ず彼女の上に身体が覆い被さる体勢になってしまったんだが、花々里は全然目を開ける気配がない。
信号が青になる前に運転席に戻ってハンドルを握らねばならないというのに……。
ついついこのまま、とか思ってしまう程度には、花々里の無防備さが俺を蠱惑する。
と、薄く開いた花々里の唇から「頼、綱ぁ……」と俺を呼ばわる声がして。
目を覚ましたのかと期待したのだが。
「……鰻……美味しーね」
とか。
何だ、寝言か……と思うと同時に、切ないくらいそんな花々里に対して愛しさが込み上げてくる。
何だって俺の花々里はこんなに可愛いんだろう。
キミはきっと……今、食べさせたばかりの鰻の夢を見ているんだろうね。
せっかくいい夢を見ているみたいだし、起こすのは忍びない。
ほんの少し遠回りをして帰ろうか。
そんなことを思ってしまう程度には、俺はこの娘のことが愛おしくて堪らないみたいだ。
END(2021/03/24)