そろそろ喰ってもいい頃だよな?〜出会ったばかりの人に嫁ぐとか有り得ません! 謹んでお断り申し上げます!〜
 けど、私の鼻の頭に泡が付いたのを見て、それを食べようって……。

 頼綱(よりつな)め。

 私がウフなんとかを鼻に付けると思ってるのね?
 食べ物をとっても大事にするこの私が! そんな()()()()()()ことするわけないじゃない!
 全部残さず口の中に入れるに決まってるのに、失礼しちゃうわっ!

 けど、口に全部入れるとなると気になるのはそのお味。

 頼綱、確かメレンゲが〝何やらソース〟に浮いてるって言ってたよね?
 ってことは決め手は何やらソース?
 それってどんな味なの?と考えてから、聞くべきか聞かざるべきか迷ってチラチラと頼綱をうかがい見いたら、「アングレーズソースは小麦粉の入っていないサラサラなカスタードクリームみたいなものだよ」と説明された。

 今、私、何やらソースとかって声に出してたわけじゃないよね?

 何で分かったの?

 私の表情ってそんなに分かりやすい?

 それとも頼綱が異能者なの? それにしても、よ。

 さっきのウフなんとかにしても、何やらソースにしても、頼綱(よりつな)とは時折言語的なズレを感じることがあるの。

 それはきっと〝育ちの差〟からくるものなんだろうけど、もっと庶民の私にも分かりやすく話してくれたっていいのに。

 けど、多分彼にとってはそれが慣れ親しんだ()()()言葉で、私にそれが伝わりにくいとすら気付いてないんだろうな。

 そう思ったら、何故だかほんのちょっぴり寂しくなった。
< 96 / 632 >

この作品をシェア

pagetop