そろそろ喰ってもいい頃だよな?〜出会ったばかりの人に嫁ぐとか有り得ません! 謹んでお断り申し上げます!〜
 そうこうしていたら浴衣(ゆかた)から覗くひじから先の部分にそっと海綿がのせられて。

 ほかほかと生温いそれが頼綱(よりつな)の手で上下されるたび、きめ細かい泡が腕にまとわり付いてきた。

 それだけのことなのになんだかゾクッとするほど心地よくて。

「ん、っ……」
 思わず変な声が漏れてしまって、私は恥ずかしさに強く目をつぶった。

 途端いきなりグイッと手を引かれて、気がついたら頼綱(よりつな)の上に横抱きに座らされていて。

 よろけた拍子に足回りのすそがさばけたようにめくれ上がって、(ひざ)がむき出しになってしまう。

 早く直したいのに、腕をワキ(付け根)に向けて這い登ってくる海綿の感触がそれを許してくれなくて。

 濡れてもいいこと前提とは言ったけど、そんな風にされたら(たもと)のあたりまで無駄に濡れそぼってしまう。

 ひもがなくてたすき掛けに出来なかったから、多少は濡れてしまうだろうと覚悟はしていたけれど、こういう濡れ方は想定の範囲外だよー!
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