そろそろ喰ってもいい頃だよな?〜出会ったばかりの人に嫁ぐとか有り得ません! 謹んでお断り申し上げます!〜
「んっ、あの……、お願、も、やめっ――」

 一生懸命やめてって言おうとするのに、他人に身体を自由にされる慣れない感覚に、呼吸が乱れてうまく言葉にならないの。

 そうこうしているうちに、頼綱(よりつな)の腰にかけられていたタオルの水気が、じわじわと浴衣のお尻のあたりに染み込んでくるのを感じて。

 それがまた〝密着しているんだ〟と実感させられて、何だかすごく恥ずかしいの。

 海綿の柔らかな感触は、腕の次は当然二の足、とばかりに肌蹴(はだけ)たままの足に移ってきた。

 つま先から撫で上げるように(ひざ)、内もも……と泡を塗りたくられて、身体に力が入らなくなってしまう。

「よ、りつなっ、ダメ……っ」

 それでも何とかそうつぶやいたら「ね? ()が言った通り、気持ち良かっただろう?」っていつもよりほんの少し掠れた、どこか艶っぽい声で問いかけられた。
「は、いっ。海綿(それ)の凄さはじゅーぶん分かった……ので、もう……」

 離して欲しいとそっと足に伸ばされたままの頼綱(よりつな)の手に手のひらを重ねたら、
「よろしい。じゃあ()は泡を流して少し温まってから上がるから、花々里(かがり)も濡れた浴衣を脱いで風呂に入るといい」

 そう言って私の身体を起こして、自分が座っていた椅子を譲って座らせてくれた。

 一人称もいつもの「俺」に戻っていて、何故だか少しホッとする。


 私はまだ自分の身体に残る、何だかよく分からない()()()()()()()が冷めきらなくて、椅子の上にうずくまるようにして顔を伏せた。
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