或いは誘蛾灯のような
「それで、先ほどのお話の続きなんですけれど……」

 彼女はそう言って僕に背を向けると、奥の棚からアンティーク風のオイルランプを手に取った。

 それは油壺の部分だけではなく、炎を覆う(しずく)型のホヤのガラスまでもが透き通るようなマリンブルーで……。手のひらに載るほどの小型サイズながら、とても上品で存在感のある品物だった。

「これなんて如何(いかが)でしょう?」

 彼女が手にした、美しいテーブルランプの造形美に見惚(みと)れていた僕は、久遠(くおん)さんにそう問いかけられて、ハッとする。

「え? でも……」

 確か彼女は涼しくなれるグッズを勧めてくれると言っていなかったか?

 ランプは明かりを灯すものであって、涼を求めるときに使う道具ではないような……。

「信じていただけるかどうか分からないのですけれど……」

 僕の疑問をすぐに察したらしく、久遠さんが口許(くちもと)に淡い微笑をたたえながら口を開く。
< 5 / 11 >

この作品をシェア

pagetop