政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
私の居場所
雪が降る寒い日、私は父に引き取られた―――

私に父がいたと知ったのは母の葬式の日だった。
母の友人がどこから連絡をとったのか、私の父だと名乗る人がやってきて、名刺を見せた。

「子供ができていたとは知らなかった。こちらの社会的な立場もある。面倒は見てやるが、それ以上は期待しないでくれ」

私は父のその言葉に自分が歓迎されない子であることを悟った。
そして、父の子として引き取られるのではなく、厄介者として扱われることも。

「はい……」

「ものわかりが良くて助かる」

ものわかりがいいのではない。
期待してないだけだった。
いつも過剰に期待はしないようにしている。
母は私を育てるのに忙しくて、学校の行事は一度もきてくれなかったし、アパートに帰っても一人。
今も私は一人。
母が亡くなるまで、いたことすら知らなかった父を父とは思えず、ほとんど他人のような存在でしかない。

< 1 / 240 >

この作品をシェア

pagetop