政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
「助けていただいてありがとうございました。申し訳ないのですが、町まで送っていただけますか?後は自分でなんとかできますから」

「怒った理由がわからないけど、なにか気に障った?」

「お祖父さんが死んだら、私は井垣と縁を切って、一人静かに暮らしていくつもりでした。だから、もう関係ありません」

これでわかってくれただろう。
そう思っていたのに呆れた顔で、壱都さんは私を見ていた。

「死ぬ気かな?」

「えっ!」

し、死ぬ?私がってことよね?
青い顔をした私に答えてくれたのは壱都さんではなく、樫村さんだった。

「井垣グループは白河財閥と並ぶ巨大企業です。社長の座を狙う方など、大勢いるでしょう。狙っているのは親族だけじゃない。社長になりたい人間は重役の中にもいるんです」

樫村さんは私の顔色をうかがいながら、話を続けた。

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