政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
「あなたがいなくなれば、井垣会長の遺言は無効になる。つまり、血で血を争う惨状になるでしょうね」

樫村さんが淡々と説明してくれたけど、それが余計に現実味を帯びて聞こえた。

「でも、財産放棄すれば、狙われませんよね!?」

「放棄する前に殺されなければいいね」

「……お、脅し?」

綺麗な顔で壱都さんはにっこりと微笑んだ。

「俺なら君を守ってあげられるよ」

まるで、悪魔のささやきだ―――

「誰も白河家に手を出そうとは思いませんよ。性格の悪さと欲深さでは定評がありますから」

それは胸を張って言っていいことなんだろうか……
命を狙われたことなんてないし、こんな時、どうしたらいいかわからない。

「決まったみたいだね。俺が君を守る、君は俺と結婚する。これでいいんじゃないかな」

「結婚なんて困ります!」

「それじゃ、他にいい案はある?」

いい案?
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