政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
今まで、彼女を娘として扱っていないことは見てとれた。

「それで、お祖父様にはお願いが」

「なにがお祖父様だ。なんのおねだりだ」

白河(しらかわ)のボディガードをお借りしたいと思いまして」

「身を守る護衛がいるか。井垣の息子はそこまでの阿呆(あほう)か」

「残念ながら」

「わかった。好きにしろ。だが、これ以上は助けない。わかるな?」

壮貴さん側が財産争いに勝った場合を考えてのことだろう。
井垣と白河が敵同士にならないため、祖父は最低限しか手を貸さない。
負ければ、祖父は容赦なく自分を切り捨てるだろう。

「十分です」

ボディガードが樫村(かしむら)だけでは心もとない。
多少、仰々(ぎょうぎょう)しいほうが向こうも手を出せないだろう。

「私のためにありがとうございます」

絞り出すような声で朱加里がお礼をいい、頭を下げた。
< 112 / 240 >

この作品をシェア

pagetop