政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
この状況で白河の祖父を相手に挨拶できれば、たいしたものだ。
さっきから目の前で繰り広げられるお互いの利害のみの会話にショックを受けてないはずがない。

「井垣の最期はどうだった?」

「穏やかな顔で、まるで眠っているような最期でした」

「そうか」

祖父は窓の方を向き、それ以上なにも言わなかった。
会話はこれで終わった。

「行こうか。朱加里」

「はい」

部屋を出た廊下には樫村が控えていた。

「樫村。今すぐ、白河のボディガードを数人手配しろ。それから、俺は来週から井垣で働く」

「はい。準備は済んでいますから、いつでもいけますよ」

この時のために俺は準備してきた。
白河で働きながら、少しずつ井垣に接触し、共同プロジェクトといいながら、じわじわと影響力を持たせていった。
おかげで、今は井垣グループの社長である壮貴さんよりも信頼されている。
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