政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
海外支店で無駄な時間を過ごしていたわけじゃない。
こっちは結婚するつもりで頑張っていたっていうのに彼女の方はまったく意識してなかったのか、会っても素っ気ないし、財産は放棄すると言い出し、俺は少なからず、ショックを受けた。
―――欲がないんだろうな。
わずかな幸せを望んでいるのはわかっていた。
きっと普通の幸せでいいのだろう。
彼女は。
けれど、それでは生きていけない。
井垣の娘として生まれてしまったのだから、彼女にも覚悟してもらわなくてはならない。
たとえ、俺との結婚が井垣と白河の政略結婚だと思われていても、だ。

「ボディガードをつけられるということは本当に危険なんですね」

「安心していい。白河が守る」

「……そうですね。ありがとうございます」

朱加里がお礼を言いながら、うつむいたのがわかった。
俺達の結婚は綺麗なところからのスタートではない。
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