政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
必要なもの?
壱都さんは私が白河会長と会ったことで緊張していると思ったらしい。
でも、本当は違う。
ショックだった。
私達の結婚は純粋なものじゃないとわかっていたのに。
何度も自分に言い聞かせたのに駄目だった。
利害なしの関係でいたいなんて虫が良すぎる。
だって、私が井垣の娘じゃなかったら、壱都さんは見向きもしなかっただろうから。
言葉少なに私と壱都さんは二人で暮らすというマンションへやってきた。

「ケンカしないで、仲良くしてくださいね」

秘書の樫村(かしむら)さんが部屋に荷物を運んでくれた。
会話の少ない私と壱都さんを心配したのだろう。
二人は私から離れたところで話していて、なにを話しているのかわからないけど、樫村さんがもう少しいてくれればいいのにと思った。

「では、自分はこれで」

樫村さんはお辞儀をし、部屋から出て行った。
二人になると、なんだか気まずい。

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