政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
ふらふらとドアを開けて部屋の外に出ると、驚いた顔で壱都さんが振り返った。

「あの……部屋にあるものは……まさか……」

「ああ。あれか。荷物を持ち出せないかと思っていたから、揃えておいた」

つまり、遺言書が開封されたら、あの状況になるということはすでに把握済みだったってこと?
どこまで先を読んでいるのだろう。

「使えばいい。俺には女装趣味はないし。あと夕飯だけど、ここから好きなものを選んで」

私より似合いそうだけどって、違う!
差し出されたメニューは和食から洋食、中華までそろっていた。
あまり食欲がなく、食べたいものが思い付かない。
差し出されたメニューをぼんやりと眺めていると、壱都さんが私に声をかけた。

「温かい蕎麦は?それなら、入らない?」

「お蕎麦でお願いします」

「わかった。だし巻き卵といなり寿司と蕎麦を注文しておくよ」

「食べきれません」

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