政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
「わかってる。食べられる分だけ食べればいい」

その言葉に壱都さんは私に食欲がなく、なにも食べてないことを知っているのだと気づいた。

「あの、ありがとうございます。こんな急だったのに何もかも揃えてあって、驚きましたけど、助かりました……」

危うく蕎麦の話に紛れ、お礼を忘れてしまうところだった。
私のことを気にかけてくれていた―――って、ほだされかけてハッと我に返った。
気づいたら壱都さんのペースになってしまっている。

「俺にすれば、急なことじゃなかった。全部、井垣会長の計画通りだった。ここまではね。ここから先は俺が任されている」

意味深な言葉だった。
私にはこうなることもこの先すらわからないのに壱都さんにはわかるようだった。

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