政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
「君に贅沢をさせようと思えば、会長にはそれができた。でも、しなかった。すべて今日のために。自分の息子を(あざむ)き、油断させ、君に目がいかないようにした」

「そうだったんですか。私は十分、贅沢をさせてもらいました。だから―――」

「だから、財産も俺もいらない?」

いらないなんて、言えるような空気ではなかった。
壱都さんの目が怖い。

「い、いいえ」

「そうか。それなら、よかった」

にこりと壱都さんは微笑んだ。
いらないと言わせる気はない。
そんな空気を感じた。

「私と本当に結婚するつもりですか?」

「もちろん。ずっとそのつもりだった」

壱都さんは私を真っ直ぐ見ていた。

「財産目当てで結婚すると思っているなら、大間違いだ」

私の心の中を読んだかのように壱都さんは言った。

「俺はお金に不自由はしていない。白河家にいれば一生食うには困らない」

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