政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
「それじゃあ、どうして」

「井垣会長の提案に乗ったのは面白いと思ったから。引き受けたのは君を好きになったからだ」

壱都さんはバスタオルを私に投げた。

「バスルーム、先に使っていいよ」

「ま、待ってください!」

慌てた私を見て、壱都さんが笑った。

「すぐに手をだすほど、飢えてないよ。色気たっぷりに誘ってくれるなら別だけどね」

「バスルーム、使わせてもらいます!」

「いいよ。一緒に入る?」

「入るわけないでしょっ!」

「そっか。残念だなー」

壱都さんは私をからかって、楽しんでいるとしか思えない。

「もうっ!」

バンッとバスルームのドアを閉めた。
はあ、と息を吐き、顔を上げると目の前にはモデルルームのようなバスルームがあった。
井垣の家よりも立派なバスルームに呆然とした。
お金に不自由していないというのは本当かもしれない。
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