政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
聞けば、教えてくれるのだろうけど、聞きにくい。
こんなの怖くて買えないというのもあるけど、必要な物は十分揃っているから欲しいものはなかった。

「ご遠慮なさらずにお好きなものをお選びいただいてよろしいんですよ」

「いえ、私は特に」

百貨店外商部の人はにっこりと微笑んだ。

「ここにないものでも、構いません。どうぞ気軽にお申し付けください」

「いえっ!そんな!」

こんなの贅沢過ぎて、私には手が出せない。
値札がないというだけで心臓に悪い。

「どうぞ、奥様。カタログもございます」

奥様って私のこと?
分厚いカタログまで手渡され、何がなんでも買い物をさせようという空気を感じた。
泣きたい気持ちになりながら、外商部の人とボディガードに挟まれて、商品を見ているふりをした。
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