政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
「私達、母が違っていたでしょう?私、いつも陰で朱加里にいじめられていたんです。誰もいないところで殴られたり……これ」

腕をめくってみせると、たしかに青痣ができていた。

「私がお祖父様とお話したいって思っていても、朱加里が会わせてくれなくて、会えなかったのよ」

朱加里が井垣に来る前から、紗耶香さんは井垣会長と仲が良くなかったはずだ。
俺が知らないとでも思っているのだろうか。

「私がお祖父様に会えない間に朱加里がお祖父様に取り入って、財産だけじゃなくて、私から壱都さんまで奪ってっ」

自分に酔っているのか、同情を誘うように涙をこぼした。

「自分が貧乏に暮らしていたのを恨んで、いつか私を蹴落としてやろうと思っていたのね……私、怖い」

女優にでもなれよとツッコミをいれたいところだった。

「紗耶香さん、今は気が(たかぶ)っていて、冷静に話せないでしょう。一度、家に帰って―――」

< 138 / 240 >

この作品をシェア

pagetop