政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
「紗耶香さん!?」

ちょうど、夕飯の買い物に行っていたのか、食材を片手にボディガードと一緒に朱加里が現れた。

なんて()が悪い。
涙を流す紗耶香さんに同情するかのように悲しい顔で朱加里は駆け寄って言った。

「紗耶香さん、なにかあったんですか?」

ちら、と朱加里は俺を見た。
俺が悪者?
お前の悪口を今までこの女は言っていたんだぞ!とできることなら、大声で言いたかった。

「紗耶香さんはもうお帰りになるそうだから。樫村」

「は、はい」

俺の怒りのオーラを察したのか、樫村がささっと背後から現れた。

「い、壱都さん」

「待ってください。紗耶香さんが……」

「さっさと帰れ」

冷たく言い放った。

「…え?」

ぽかんと紗耶香さんは口を開けた。
しまったと思ったけれど、もう遅い。

「そんな言い方しなくても」

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