政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
いつものからかうような雰囲気は一切ない。

「やめてください!」

体にかかる重みが自由を奪い、もがいても離してくれない。

「俺はそんな悪人か」

作り笑いが消えていた。

「んっ…」

唇が奪われて、拒絶の言葉を塞いだ。
息をつく暇も与えず、舌が唇をなぞり、口を開けさせ、深いキスをした。

「やっ……ふっ……あ……」

こんなキス初めてだった。
噛みつくように唇を首筋に押し当てられ、乱れた息がかかる。

「俺が嫌いなんだろう?」

自分で気づいてないのだろうか。
そう聞いた壱都さんはまるで泣いているみたいだった。

「き、嫌いじゃないです」

思わず、本心が自然に口から出てしまい、しまったと思った時はもう遅かった。
驚いた顔で壱都さんは私を見た。
それが、気まずくて目を逸らした。

「壱都さんが私を好きになるところなんて、なに一つないって思っていて……私は自分に自信がないんです」

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