政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
父の仕返し
私が秘書として出勤した頃には父の姿は井垣グループのどこにもなかった。
社長室では壱都さんが忙しそうに働いていて、周囲の人達も私が井垣の娘だと知っているのに父のことに関してはなにも触れなかった。
壱都さんの妻としては扱われているようだったけど……
「あのー」
「どうかした?」
壱都さんは社長の椅子に座り、優雅に微笑んだ。
隣には樫村さんがいて、書類を手渡される姿はまるで王子と従者だった。
それはいい―――でも、私と言えば、社長室の立派なソファーとテーブルが置かれたところに座って樫村さんがいれてくれた紅茶を飲んでいた。
高級そうなカップを落とさないようにしながら。
「仕事をしたいのですが……」
「もしかして、朱加里さん、紅茶じゃなくてコーヒー派でしたか?」
「樫村さん。そういう問題じゃないです」
社長室では壱都さんが忙しそうに働いていて、周囲の人達も私が井垣の娘だと知っているのに父のことに関してはなにも触れなかった。
壱都さんの妻としては扱われているようだったけど……
「あのー」
「どうかした?」
壱都さんは社長の椅子に座り、優雅に微笑んだ。
隣には樫村さんがいて、書類を手渡される姿はまるで王子と従者だった。
それはいい―――でも、私と言えば、社長室の立派なソファーとテーブルが置かれたところに座って樫村さんがいれてくれた紅茶を飲んでいた。
高級そうなカップを落とさないようにしながら。
「仕事をしたいのですが……」
「もしかして、朱加里さん、紅茶じゃなくてコーヒー派でしたか?」
「樫村さん。そういう問題じゃないです」