政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
いつもなら、何か言い返すのに今はそんな気になれなかった。
壱都さんと樫村さんの顔が見れない。

「いろいろと……ごめんなさい」

二人は首をかしげ、不思議そうにしていた。
迷惑をかけないようにおとなしくしていようと心に決めたけど、さすがに私も暇だった。
一日中、ティータイムなんて無理。
とうとう私が暇を持て余し、社長室の掃除を始めたのを見て、二人は簡単な仕事を渡してくれた。

「コピーに行ってきますね」

コピーする書類を手にしたその瞬間、社長室のドアがばんっと勢いよく開いた。

「白河社長!大変です!」

バタバタと大きな足音がしたかと思うと、飛び込んできた男の人を乱暴に突き飛ばし、社長室に入って来た人がいた。

「どけ!」

樫村さんはさっと前に出た。
ボディガードも兼ねているらしく、長身の樫村さんは立っているだけで威圧感がある。
壱都さんは机に肘をつき、微笑みを浮かべていた。

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