政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
弁護士さんに壱都さんが聞くと、弁護士さんはおびえたように身を震わせた。

「は、はい。その、井垣会長は認知症を患っていたとの証言があり、遺言書は無効ではないかと……」

認知症!?
驚いて、三人の顔を見たけど、素知らぬ顔をしていた。
そうじゃないことを知っているはずなのに!
どうして、そんな嘘を。

「へぇ?それは初耳だ。誰が証人なのかな?」

「町子さんだ!」

「ま、町子さん?」

そんなわけない。
町子さんは私のことを心配してくれていたし、お祖父さんのことも気にかけていてくれた。
嘘をつくわけがない。
壱都さんは微笑んだままだった。
私がそんなことないと視線を送っているのに壱都さんは気づいてないのか、あっさり承諾してしまった。

「そうですか。それでは、どうぞ」

壱都さんはすっと椅子から立ち上がり、父に椅子を譲る。

「壱都さん……でも……」

混乱している私の腕を掴んだ。

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