政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
白河家の呼び出し【壱都】
俺が社長の座を追われた話は瞬く間に広がった。
その日の夜には白河の祖父に呼びつけられることとなった。

「ごめんなさい……」

ずっと朱加里(あかり)は謝ってばかりだった。

「謝らなくていい」

「壱都さん。お祖父さんは認知症ではなかったんです。本当にしっかりされていて、亡くなる前日もいつもと変わらない様子でした」

泣き出しそうな顔をしていた朱加里の頬をなでた。

「わかっている。落ち着いて」

「どうして町子さんはあんな嘘をついたのか」

人から裏切られるというのは辛いことだ。
特に一緒に働いていて、仲良くしていた相手だっただけに朱加里の動揺は大きかった。

「町子さんより、白河家ですよ」

樫村は運転席から俺と朱加里に言った。

「白河家が集まっている所に朱加里さんを連れて行くなんて、可哀想すぎせんか。魔物の巣窟(そうくつ)にウサギを放り込むようなものですよ」

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