政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
二番目の兄の直将(なおまさ)は呆れているし、父は何も言わない。

母は心配そうに俺を見ていた。
これはなかなかおもしろいなと思っていると、祖父は言った。

「井垣の遺言では財産を孫娘に渡すから、その相手としてお前をくれという話だったはずだ。井垣から疎まれ、財産を失った娘を白河家の嫁にする必要はあるか?」

祖父の言葉に父が頷いた。

「詐欺同然だ。結婚してなかったのが、幸いだったな。今すぐ別れなさい」

朱加里に父はそんなことを言ったが、朱加里は俺の顔を見た。

「別れません。壱都さんを信じています」

「なんだと?」

「まあ」

父と母は驚いていたけれど、祖父は笑っていた。

「壱都は社長の椅子を追われ、今となっては白河にも戻れず、ただの無職だぞ。それでも別れないのか?」

「別れません」

祖父はなるほど、と頷いた。

「井垣によく似ている。頑固者だな」

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