政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
「壱都!お前はどうなんだ。別れずにこれからどうするつもりだ?」

父は怒っていたが、隣の母は朱加里を気遣い、声をかけた。

「その話は私達には関係ありませんわね?朱加里さん、お茶でもいかが?」

母は朱加里にそう言った。
母なりの親切だったかもしれないが、母の言うお茶はお茶席だ。
朱加里はお茶席だとわかっているのか、いないのか―――頷き、母と行ってしまった。
大丈夫なのだろうか。

「聞いているのか。壱都」

「聞いてますよ」

聞いていなかったけれど、微笑んでそう答えれば、父も満足だろう。
『お前はいつもどこかフラフラしている男だ』『もっと後先を考えて行動しろ』と延々と説教をされ、解放されたのは夕方になっていた。
井垣の社長の座に戻るようにしますと俺が言うまで説教された。
まったく、兄も父も暇なことだ。
俺に説教する時間があるなら、自分の仕事をしていればいいものを。
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