政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
確かに町子さんはおしゃべりだった。

「お祖父さんの朝食をいただいていきますね」

お祖父さんの朝食は豪華だった。
塩鮭に温泉卵、ネギをのせた冷奴(ひややっこ)、サラダにご飯、みそ汁、デザートにはオレンジがついている。
朝ごはんを持っていくと、お祖父さんの前に置いた。

「とてもおいしそうですよ」

「いつもと変わらん」

食欲がないのか、お祖父さんは食べようとしない。

「魚をほぐしましょうか」

「自分で食べる。病人扱いするな」

そう言うと箸をとって食べ始めた。
確かにしっかりしていて、食べ方も綺麗だった。
目の前の椅子で座って眺めているとお祖父さんは私に言った。

「じろじろみるな」

「すみません」

「学校があるだろう。自分の食事をしてきたらどうだ」

「はい」

確かに人に見られていると食べにくいと思う。
ふたたび台所に戻ると、大盛りの朝食が準備されていた。
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