政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
コピーした書類を手に社長室に戻ると、壱都さんと樫村さんが私の顔を見た。

「な、なんですか?」

「お客様がくる。お茶を用意してもらえるかな?」

「はい」

お湯を沸かしていると、社長室に誰かが入ってきた気配がした。

「申し訳ありません……!」

声を震わせ、謝る声は私がよく知っている人の声だった。

「町子さん!」

朱加里(あかり)。久しぶりだろう?話したいこともたくさんあるんじゃないかな?」

壱都さんの笑顔が怖い。
町子さんは私の顔を見ず、目を閉じていた。

「町子さん、元気でした?今、どうしているんですか?」

「朱加里さん……いえ、朱加里お嬢様」

「私はお嬢様じゃありません。そんな呼び方はやめてください」

「朱加里さん。まだ問題は解決してませんよ。だから、彼女を呼んだ」

樫村さんが低い声で言った。

「樫村さん?」

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