政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
「井垣会長が一番のライバルかもしれないな。でも、そろそろ泣き止んでもらわないとね」

珍しく壱都さんは憂鬱そうに溜息をついて、テーブルに小さな箱を置いた。

「これは?」

涙をハンカチでぬぐって箱を見た。

「開けてみて」

箱を開けると、中からリボンの形をしたデザインの真ん中にハート型の大きなダイヤモンドがキラキラと輝いているプラチナリングが現れた。

「どうせ泣くなら、指輪をつけた後にして欲しかったな」

少し拗ねたように言いながら、壱都さんは指につけてくれた。

「ありがとうございます。すごく……」

すごく高そうですね、と言いかけて言葉を呑み込んだ。
こんな時に言うセリフじゃないと思い直した。

「すごく気に入りました」

そう言うと、壱都さんは嬉しそうに微笑んだ。
嬉しそうなのはいいけれど、この指輪、とてつもなく高いのでは?
思わず、涙もひっこんでしまった。
驚きすぎて。
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