政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
何もなくとも【壱都】
俺と朱加里(あかり)が婚約したと広まるのはあっという間だった。

「ご婚約おめでとうございます」

最近、どこに行っても言われる言葉だったが、(わずら)わしいとは思わなかった。
むしろ、何度でもお祝いの言葉を聞いてもいいくらいだ。

「来年にはご結婚なさるとか。亡き井垣(いがき)会長もさぞかし、お喜びでしょう」

「そうだといいのですが。まだまだ頼りないと思われているかもしれませんね」

「ご冗談を。壱都(いちと)さんが井垣グループの社長になられて、これで井垣も安泰だと皆さんおっしゃってますよ」

「奥様となられる井垣のお嬢様にもぜひお会いしたかったですね」

「次回は必ず」

にっこり微笑み、シャンパングラスを軽くあげた。
取引先のパーティーに招待され、朱加里(あかり)も一緒にと誘ったのだが、先に予定が入っていた。
井垣会長と親しくしていた方々との会食らしい。
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