政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
名前を聞くと料亭の女将やお茶の先生など、その業界では名前が知られた有名な方々ばかりだった。
朱加里が大学生の頃から交流をしているそうだが、井垣会長は横の繋がりも少しずつ作ってきたのだ。
朱加里の助けとなるように。

「……気づいていないんだろうな」

朱加里は肩書で付き合うようなタイプではない。
だから、こっちも白河家の三男としては見られてなかったように思える。
むしろ第一印象は悪かったような気がする。
俺に対して冷たかった。
それが、今では心を開いてくれている。
信頼されるのが、こんな嬉しいことだと思わなかった。

「それで、壱都さん。井垣のお嬢様はご存知なのですか?井垣家が売りに出されていることを」

「知らないでしょうね」

遺産相続争いをしていることは知られており、会長を貶めたことも白河家を通して広まっていた。
おかげであの三人は誰からも相手にされない。
< 197 / 240 >

この作品をシェア

pagetop