政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
「壱都さんにお会いしたくて、きたんです。朱加里と婚約したって聞いて。私が婚約者だったのにひどいわ!」

遠くに見える紗耶香さんの友人は顔を青くさせて震えていた。
可哀想に―――と口の端をあげた。

「俺の婚約者は初めから朱加里です。喪があければ、すぐにでも入籍しますよ」

「朱加里と結婚なんて、ありえないわ!壱都さんに似合わない!」

「どちらが相応しいか、周りの皆さんのほうが、よほどご存知のようだ」

紗耶香さんはハッとして、周囲を見回した。
冷たい視線が注がれていることに気付き、苛立ちからか、周囲を睨み付けた。
もう紗耶香さんは自分をうまく取り(つくろ)えていない。

「今日は紗耶香さんが主役のパーティーではありません。場を壊すような真似はしたくはない」

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