政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
会場が騒然とし、床に押し付けられた紗耶香さんは悔しそうに唸っていた。

「警察を呼べ!」

警察と聞こえると紗耶香さんは身をびくりと震わせた。

「大変なことになりましたね」

俺は冷静だった。
わずかににじんだ血をハンカチで押さえ、紗耶香さんのそばにしゃがんだ。
そして、誰にも聞こえないように声をかけた。

「さようなら。紗耶香さん。しっかり罪を償ってください。そして二度と朱加里の前に現れないように。二度目はこんなものではすませませんよ」

やっと俺の罠だと気づいたらしい。
友人のパーティーがあることを紗耶香さんが知るように仕向けたのは俺だ。
自分だけが招待されてないことを知れば、紗耶香さんは冷静ではいられないだろうということもわかっていた。
なにか仕掛けてくる。
それさえ、わかっていれば、なんとでもなる。
紗耶香さんの瞳は恐怖の色を浮かべていた。

「あなたは悪魔なの?」

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