政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
「はい……。お伺いします」

「近いうちに必ずよ」

なんだろうと思いながらも、頷いた。
婚約のお祝いのお茶席を設けてくれるのだろうか。
タクシーが見えなくなるまで見送ってから、自分のスマホを手にした。
会食が終わり、壱都さんに連絡すると出たのは樫村(かしむら)さんだった。

『すみません。今、壱都さんが手当てを受けていて電話をとれなかったもので、代わりに受けました』

「手当て?なにかあったんですか?」

紗耶香さんからナイフで刺されたと聞いて倒れそうになった。

「う、嘘……!」

慌ててタクシーに乗り、マンションへと向かったのだった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「壱都さん!」

部屋に飛び込むと壱都さんは白い包帯を腕に巻き、痛々しい姿をしていた。

「ナイフで刺されたって聞いて……!」

「かすり傷だよ。朱加里(あかり)がいなくて本当によかった」

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