政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
壱都さんは自分が怪我したというのに私の心配をしてくれた。

「傷は平気なの?深くないの?」

「そんな心配しなくても大丈夫だよ。ただ俺の怪我が治るまで、そばにいて助けてくれると嬉しいな」

「ええ」

利き腕の右腕に包帯をしたままで、痛むのか左手で私の頬をなでた。
背後から視線を感じ、振り返ると樫村さんが壱都さんを呆れた顔で見ていた。

「自分はこれで失礼します。壱都さん、いい加減にしておかないと、白河会長に言いつけますよ」

「わかってるって。樫村は怖いなぁ」

ナイフを持った人間に襲われるという怖い思いをしたばかりなのに壱都さんは落ち着いていた。
むしろ、機嫌がいい。

「会食はどうだった?」

刺されたと聞いたせいで頭の中が真っ白になり、楽しかったとは答えることができなかった。

「お茶の先生が壱都さんと近いうちに伺ってほしいとおっしゃられて」

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