政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
「ああ、朱加里は顔は合わせない方がいいと思うよ。向こうはよく思ってないだろうし、危険だよ」

「そうですよね」

私を見ても不快なだけだとはわかっている。
壱都さんが言うように会わないほうがいい。

「お互いに距離を置くのが一番だよ」

そう言って、壱都さんは私に孤独を感じさせないためなのか、抱き寄せた。

「大丈夫。朱加里には俺がいるからね」

「ええ」

抱き締められた腕の中は心地よく、私は目を閉じた。
壱都さんが無事で本当によかったと思いながら―――


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「壱都さん!なにをしているんですか?」

朝、壱都さんを迎えに来た樫村さんの第一声はそれだった。

「何ってご飯を食べさせてもらっているんだけど?ほら、利き腕が怪我しているからね」

「すみません。いつもより、遅くなってしまって」

「朱加里さんは謝らなくていいですよ」

「次はその卵がいいかな」

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