政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
「はい」

スプーンですくい、口に運ぶ。
幸せそうな顔で壱都さんは卵を口にした。

「壱都さんが一人で食べれないなら、パンにすればよかったでしょう」

「あっ!そ、そうですよね」

恥ずかしい。
どうして思いつかなかったのだろう。

「朱加里さん、怒っていいですよ。傷は絆創膏をはっておけば、いいくらいの傷なんですからね!」

「えっ!」

「樫村は野暮(やぼ)だなー」

「なにが、野暮ですか。朱加里さんを騙してイチャイチャして。ふざけてないで仕事に行きますよ!」

「せっかく楽しんでいたのにな」

「壱都さん!怪我が痛むって嘘だったんですか?」

「痛いよ?」

「かすり傷程度には痛いでしょうけどね」

樫村さんは冷ややかな目で壱都さんを見た。
昨日、夕飯の食事を食べさせて、恥ずかしかったのにお風呂も一緒に入って、そのあげくっ……

「私のことを騙したんですか」

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