政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
「壱都さんと入籍するので、そのご報告に参りました」

「そうか」

まじまじと私の顔を見た。

「似ていないと思っていても、面影はあるな」

「井垣のお祖母さんにですか?」

亡くなってしまっていて、お会いすることは叶わなかったけれど、お祖父さんから写真を見せてもらったことがある。

「なぜそれを?」

「お祖父さんと親しかった方から、お聞きしました」

白河会長は舌打ちした。

「お喋り雀どもめ!あいつらは昔からそうだ。井垣の味方ばかりする」

「お祖母さん、モテモテだったんですね」

渋い顔をしたけれど、懐かしそうな目をして教えてくれた。

「そうだ。銀行業を営む家の娘だった。銀行に行くと窓口にいてな。彼女が座ると、ずらっとそこに列ができる。そこに井垣は少ない金を持って。毎日貯金に通っていた」

あのお祖父さんにもそんな可愛らしい時期があったなんて、想像できない。

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