政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
白河家ほど普通に遠い場所はない。
絶対君主である祖父は出来が悪ければ、孫であろうが、息子であろうが、お構いなしに捨てる。
その考えを俺達は共感できる。
それが白河家だ。

「そうだろう」

孫娘を褒められて嬉しいのか、井垣会長は笑った。
珍しい―――この方が優しい顔をすることもあるのかと驚いた。

「白河の婚約者を奪ってしまったからな。罪滅ぼしもあったが、それだけじゃない」

「奪われた時の祖父の顔を見たかったなぁ」

どんな顔をしていたのだろう。

「言っておくが、お前が一番、孫の中で白河と似ているぞ」

「あんな人間とですか?まったく似ていませんよ」

「どこがだ。この間、他社の受注を奪っただろう」

「ばれてましたか。でも、あれは俺が悪くないですよ?談合していたのをたまたま俺が知って、それが偶然にもマスコミに流れてしまった、それだけです」

ふう、と井垣会長は溜息を吐いた。

< 231 / 240 >

この作品をシェア

pagetop