政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
「悪い男だ。気を付けろ。わしの若い時には及ばないが、なかなかの男前だからな」

自分で言う?
仕事関係の人なのかもしれない。
それとも、町子さんが言っていた王子様だろうか。
廊下を歩く音がして、部屋の前で止まる。

「井垣会長。白河(しらかわ)壱都(いちと)です。ご挨拶に参りました」

「入れ」

襖戸が開き、入ってきたのはスーツ姿の若い男性だった。
それも私が今まで見た男の人の中で一番、綺麗な顔をしている。
茶色の髪はサラサラとしていて、中性的で整った顔立ち、長い睫毛(まつげ)に穏やかで落ち着いている雰囲気。
それに加え、上品な立ち振る舞いが身に付いていて、椅子に座るだけでも普通の人とどこか違っていた。
確かに王子様と呼んでしまいたくなるのも納得だった。

「お元気そうですね」

「ふん。こんな姿で元気なわけないだろうが。お前の祖父に似て嫌味がうまいな」

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