政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
「そうですね。勉強の邪魔にならないようにと配慮したつもりでした」

「ここで会ったのは偶然だっていうの?」

なかなかしぶとい。
スッポン並みの食い付きだ。

「そうですね。世間は狭い」

「てっきり壱都さんは私に興味があるって思っていたけど、私の勘違いなのかしら?」

ホテルで会ったことを言っているのだろうか。
紗耶香さんは一歩前に出た。
おいおい、まさか俺に迫るつもりか。
樫村に指で合図をした。
俺の意図することに気づいたらしく、素早くホテルマンにメッセージカードを渡した。

「井垣紗耶香様はいらっしゃいますか」

「私だけど?」

「ご友人からご連絡が入っております。こちらへどうぞ」

「せっかくいいところだったのに」

紗耶香さんはブツブツと文句をいいながら、日本語ができるホテルマンに案内され、俺から離れた。

「よかったですね。彼女の友達の交遊関係を把握しておいて」

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