政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
「短期留学にきてるんだから、気にしなくてもいいのに。留学を勧めてくれたのもおじいさんなんでしょ?」

「そうなの。勉強になるからって。だから、頑張らないとって思ってるの」

「少しは手を抜いたらいいのに」

「そうはいかないわ」

真面目な顔で朱加里が答えた。
俺は声をかけそびれて、公園の中に入っていく彼女を眺めた。

「頑張らないと、か」

もっと気楽に生きているのだと思っていた。
俺は白河家の親兄弟に対して、そこまで情を持っているだろうか。
家族でも淡々とした付き合いの白河家。
白河の祖父に心配だからメールをしたと、言おうものなら杖で殴られそうだ。
家族なら、あんなふうに気にかけてもらえるものなんだな―――それがなぜか、羨ましく感じた。
彼女より俺の方がなんでも持っていて、自由にも関わらず。
気になるのは素っ気ないからだけじゃない。
俺よりずっと孤独が深いはずなのに優しくて強い。
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