政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
「すみません……」
「いいよ、別に」
壱都さんは私の前髪をなで、掻き分けるとおでこにキスををした。
「……っ!な、なにしてっ!」
転がり落ちそうになった体を支えて壱都さんは笑う。
ほ、保護者目線はどこに行ったの?
「これくらいなら手を出した範囲にはならないだろ?」
「なります!」
「厳しいな。ゆっくりしていたいけど、今日は俺もフランスに戻らないといけないし、朱加里は日本に帰るんだろ?」
「はい」
「空港まで送っていく」
私は声がでなくて、首を縦に振ってうなずいた。
なんとなく、別れがたいなんて言ったら迷惑かもしれないと思っていた。
ベッドから出て、リビングに行くとそこには箱と紙袋が置かれていた。
「これは?」
「プレゼントだ。スーツとワンピースとバッグ。なにかあった時、きちんとした服を持っていたほうが困らないだろう?」