政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
「久しぶり。留学中に会って以来か」

「はい」

「メールは返してくれていたのに。冷たいな」

どんな再会を期待していたのだろうか。

「お祖父さんの代わりに季節のご挨拶をしていただけです」

壱都さんとの婚約もこれで終わり。
お祖父さんが亡くなるまでのものだったのだから。
雪のように冷たい気持ちで私は自分の気持ちに蓋をした。
期待なんかしてはいけない。
何度も私は期待して裏切られてきた。
きっと今回もそう。

「婚約者に会ったのに親の(かたき)みたいな顔しないでほしいな」

「婚約者って……お祖父さんが亡くなったら、もう私と結婚する理由はありませんよね」

「いや。これから意味を持つ」

「どういうことですか?」

「井垣会長は君のために準備してきた」

「私のために?どうして?」

「一人残される君が心配だったからだろうね」

次の言葉が出なかった。
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