ご先祖さまの証文のせいで、ホテル王と結婚させられ、ドバイに行きました
 

 有能な秘書様が調節してくれたおかげで、桔平はなんとか休みをとることができた。

「今日もお出かけしたんですけど。
 ドバイって、金曜日がお休みなんですね~。

 あちこち開いてなかったです」
と言う真珠は、日々、ドバイを満喫しているようだ。

 そのせいか。

「まだ私は必要ではないんですか?
 あなたの妻に会いたいという人とはいつ会えるんですか?」
とも訊いて来なくなった。

 真珠は、ドライバーやパイロット、観光案内をしてくれている六十代、七十代、八十代の人たちと親しくなり、家族ぐるみの付き合いまでしているようだった。

 ……俺とは家族らしく付き合ってないのにな、と桔平は思う。

 真珠の部屋は一応、自分と同じホテルにとってあるのだが。

 帰りが遅かったりすると、覗いても悪いかと思い、遠慮して会えなかったりして。

 ……絶対、俺より侑李の方が会ってるよな、と不安に思っていた。

 なんだかんだで侑李はいい奴だ。

 綺麗な顔してるし。

 人当たりもいい。

 俺が女でも侑李を選ぶかな、と思いながら、今日なにをしていたか、報告にしてくれる真珠の話を聞いていた。
< 100 / 189 >

この作品をシェア

pagetop